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腰痛誘発動作は大きく分けて、伸展(体を反る)動作によって誘発される伸展型腰痛、前屈型(体を曲げる)動作によって誘発される前屈型腰痛、そのどちらでも腰痛を発生する事がある混合型腰痛に分けられる。
目次
伸展型腰痛
日常生活において腰椎を伸展、回旋(体を捻る)させる動作を繰り返す事によって腰椎椎間関節、椎弓関節突起間部や棘突起間に物理的ストレスが加わり発生する。
椎間関節性腰痛では腰椎伸展、回旋、側屈(体を横に反る)動作や、特に斜め後ろに伸展させる(ケンプテスト)において腰痛が誘発される。
腰椎の圧痛は、例えば腰椎4番(L4)、腰椎5番(L5)の椎間関節に障害があればL4とL5棘突起を圧迫する事によって関節の疼痛が再現される。
また腰椎可動性の高いスポーツでは腰椎伸展時に隣接する棘突起同士がぶつかる事で疼痛のある棘突起インピンジメント(骨が腱等に挟み込む)障害が生じる。
特徴としてはケンプテストによる腰痛は生じないか軽度で、棘突起間に著しい圧痛を認める。
発生メカニズム
胸椎胸郭の可動性低下、骨盤後傾可動性低下(股関節伸展可動性低下)、体幹筋機能低下の身体機能不全の状態で伸展動作を行うと、伸展挙動(体を反る動作)は下位腰椎に集中したヒンジ型(腰骨と腰骨がこすれる動き)の伸展挙動を示すことになり、特にL4/L5椎間分節(骨と骨の間)に過剰な伸展挙動が生じ障害を引き起こす。
自主トレーニング
下位腰椎に伸展挙動が集中しない、脊柱全体をしなやかに伸展させる挙動を習得させる。その為には胸椎胸郭、股関節、体幹機能を評価し、機能不全部位を中心とした機能改善方法を見つける必要がある。
胸椎胸郭の可動性改善には、肩甲帯の可動性改善と併せて胸椎胸郭のストレッチを行う。さらに脊柱が頭側からしなやかに伸展運動が行えるような多裂筋の筋コントロール機能の改善も必要。
具体的にはうつ伏せから頭部、頚椎、胸椎を頭側から順に伸展させていく挙動を意識する。股関節の伸展の可動性を高めるために腸腰筋や大腿直筋のストレッチを行います。
体幹筋群の筋コントロールにおいては、特に腹横筋の収縮による胸腰筋膜の緊張によって腰椎柱の一つのユニット(体幹の安定や姿勢の維持する筋肉)とし、下位腰椎への挙動の集中を避けた脊柱挙動を習得する必要がある。
前屈型腰痛
腰椎椎間板を変性させ、繊維輪(椎間板の外層を形成する組織)の損傷とその修復過程において有痛性肉芽を形成し、椎間板内圧の上昇による同部への刺激によって腰痛を引き起こす。
椎間板内圧の高まる前屈動作によって腰痛が再現される事が多いが、伸展動作で腰痛が誘発される場合もある。
発生メカニズム
腰椎への軸圧力の繰り返しが繊維輪の損傷や遷延治療(回復が遅れる)を招く。動きとしては骨盤前傾角度が小さく、体幹筋と脊柱起立筋、大殿筋の筋コントロール不良によって腰椎の前弯が減少し椎間板内圧が高まり損傷が発生する。
椎間板障害の治癒には繊維輪の損傷の修復を待つ必要があるが、血流の乏しい繊維輪が十分修復するまでには数か月を要するため、数か月は椎間板内圧を高める運動を休止させる必要がある。前屈時の腰痛が軽減し、前屈制限がなくなってから自主トレを開始する。
自主トレーニング
骨盤の前傾可動性を高める為に、ハムストリングスのストレッチを行う。その際には腰椎前屈運動が生じないよう注意して行う。また胸椎胸郭のストレッチを行い、多裂筋の賦活化による脊柱伸展可動性と筋コントロールを改善させる。
矢状面における体幹深部筋(腹横筋、多裂筋)と脊柱起立筋、大殿筋の筋の働き方が重要となる。体幹深部筋と大殿筋を賦活しハムストリングスや脊柱起立筋の過活動を避ける筋の動きを習得する必要がある。
これらのエクササイズとしてはブリッジエクササイズやピラティス等が用いられる。日常生活において床の物を拾う際も骨盤前傾位を保った姿勢での持ち上げ動作が求められる。
混合型腰痛
筋性の腰痛(筋筋膜性腰痛、脊柱起立筋付着部障害)や仙腸関節障害から生じる腰痛はその病態によって、伸展、前屈(前かがみ)の運動方向による疼痛誘発部位が分かりにくいのが特徴。
仙腸関節障害
骨盤輪(寛骨・仙骨・尾骨)を安定させる為に仙腸関節周囲の靭帯の役割は大きく、運動時に骨盤輪に対する物理的ストレスが繰り返される事で靭帯の損傷や靭帯付着部障害が発生し、疼痛が生じると考えられる。
もし仙腸関節周囲の靭帯に仙骨を後傾させるストレスによって障害が発生すれば伸展型腰痛となり、前傾させるストレスによる障害であれば前屈型の腰痛を発症する。圧痛点や疼痛部位は上後腸骨棘付近にあり、one finger testが有用。
筋筋膜性腰痛
主に脊柱起立筋の過活動、または筋膜周囲の炎症によって腰痛が生じ、炎症後の筋膜の滑走性障害(滑りが悪くなる)によっても腰痛や違和感が生じる。
筋肉由来の疼痛は筋肉に伸長負荷を加えた際に疼痛が誘発されたり、筋を短縮させる負荷を加えた際に誘発したりと状況によって変化する為、前屈型か伸展型かの区別が難しい。
疼痛部位は関節性の腰痛と比べて漠然としており、指し示すことが難しい。自主トレーニングでは脊柱起立筋の過活動を是正する為の体幹深部筋や大殿筋の賦活化等による筋コントロール改善が求められる。
脊柱起立筋付着部障害
動作時に脊柱起立筋の過活動が繰り返されると脊柱起立筋と腸骨翼との境目の付着部に障害が発生する。そのため疼痛部位や圧痛点は腰椎部では腸骨翼付近示す。
うつ伏せで下肢を挙上させるPHEテストを行うと、脊柱起立筋の過活動とその付着部障害がある場合には腸骨翼に腰痛が再現される。